会社員だった人が会社辞めて無職になると、社会保険から国民健康保険に変わりますね。4時間パートだった人が6時間パートになると、ご主人の扶養から抜けて社会保険に変わったり…。
仕事するときの自分の立場、例えば正社員、臨時社員、パート、アルバイト、日雇い、自営、いろいろありますが、その立場ごとで自分を守る社会保障が変わり、その都度手続きが必要になってきますよね~~。
特に仕事を辞めて失業保険をもらうことになると、いろいろ面倒なことがあります。
そこで今回はその面倒くさいことを楽田さんご家族のケースで学びましょうね!久々にN平さん登場ですよ!
今回のお話
普通のサラリーマンの楽田A造さん(らくたえいぞう55歳)は妻で専業主婦のB代さん(びーよ50歳)と娘のC子さん(しーこ30歳)と息子のD太くん(でーた25歳)の4人家族です。
A造さんには兄弟が一人いらっしゃいます。弟のN平さん(えぬへい50歳)です。このN平さんちょっと変わりもんで、A造さんのお家から少し離れた家賃2万円のアパートで一人暮らしをしています。内緒ですがN平さん独身なんです。
若い時から転々と仕事を変えてるN平さん、ここ数年は少し落ち着いたようで近くの工場で働いていたんですが、つい先日気分が変わったと言って辞めちゃって、いまアパートでゴロゴロしています。
そんなある日曜日、B代さんが血相変えて家に飛び込んできました。
B代さん 「お父さん、お父さん、大変!!大変!!N平さんがお腹痛いって転げ回ってる!」
A造さん 「なに!N平が!」
駆けつけてN平さんを病院に連れていったらなんと盲腸だったんですが、とりあえず散らして一日入院して様子を見ることになりました。
N平さん 「アニキ、すまん…盲腸か、手術かな…」
A造さん 「先生はとにかく一日様子診るって言ってた~~それはそうと保険証持ってくるから、N平どこにしまってあるんだ?」
N平さん 「…今、保険証切らしてるんだ…」
B代さん 「えっ、N平さん!工場辞めてから、保険まだ切り替えてなかったの?」
N平さん 「……オレ病気なんかした事ないからそんなに必要ないかな…って思ってそのままにしてた…」
A造さん 「いいわ!とりあえずオレの扶養に入れるわ!」
B代さん 「えっ!お父さん、そんなことできるの?」
パレ子さん~~~!なんかヤバイですよね~~~~!保険証無いって~~~~!

確かに~~~~!でも、N平さん緊急ですから~~~パレ子、ちょっとがんばって調べてみます!
別に住んでる弟を扶養にできるかが問題!

みなさん扶養に入ってるとかって奥さんや子供の話のようで、まずそもそも50歳のおっさんが55歳のおっさんの扶養に入れるかって思いますよね~~?
扶養って国語的には「生活できるように世話をすること」とか、「助け養うこと」って意味なんですが、今A造さんが言ってる扶養とは、「税法上」と「社会保険上」の2つの意味のうち、「社会保険上」のことなんです。
そして「社会保険上の扶養」とは、社会保険の被保険者から扶養されていると認められると本人が負担無く保険給付が受けられるということを意味します。
では社会保険の扶養親族と認められる要件をいいますね!
1 親族の範囲は直系尊属、配偶者、子、孫、兄弟、または同居している3親等内の親族
2 被扶養者の収入要件は、年間130万円未満で被保険者の収入の半分未満であること
3 被扶養者が、75歳未満であること
N平さんは別のアパートに住んでてA造さんとは同居していませんが、A造さんの兄弟ですから、1の要件はオッケイですね。そしてN平さんまだ50歳ですから3もオッケイですね。
問題は2の収入要件ですね~~。
A造さん 「N平、工場辞めたばかりだよな~、お前今までどれ位稼いでたんだ?」
B代さん 「N平さん、見栄なんか張らずに、正直に言ってくださいね!」
N平さん 「月13万円から15万円そこそこだよ…工場も仕事無いときは早上がりも結構あったからな…」
そうするとこれまでの収入は年間130万円超えそうですが、社会保険上の扶養を判断するときの収入は、現時点から向こう1年間と考えますので、今回の入院等でN平さんも少しお仕事お休みするでしょうから、大丈夫そうですね。あっ!A造さんの収入の半分とういう点は全然大丈夫ですよね?
A造さん 「それはぜ~んぜん、気にすることないよ!それにしてもN平、それだけしか稼いでなかったのか……うん!とにかく扶養には入れておくから!」
B代さん 「ですね…でもそれよりN平さんのこれからのこと考えないと~~~!貯金もないでしょ?」
はい、N平さん工場辞めてますので、とりあえず失業保険をもらう方向で考えましょ!
失業保険のことくわしく教えてください!
そもそも失業保険とは?
失業保険ってみなさん呼んでますが、正式には「雇用保険の失業等給付の基本手当」(以下失業給付という)のことをいうんです。
会社を辞めたり突然の解雇(リストラ)をされたりすると、収入が得られなくなって生活困りますよね?そこで次ぎに働くところが見つかるまで最低限の生活ができる様にって「失業給付」が支給されるんです。
失業給付を受ける要件とは?
失業給付を受ける人は大きく分けて2つ、会社の解雇等で離職した人と自己都合で離職した人、今回は後者の自己都合で離職した人を中心にお話しますね。
自己都合で離職した人は、離職の日以前の2年間に被保険者期間(賃金の支払いの基礎となる日数11日以上働いた月)が12ヶ月以上あれば、失業給付を受けられます。
そしてその失業給付を受けられる期間は、原則、離職した日の翌日から1年間になります。例外として妊娠、出産、育児や、病気、ケガなどのやむを得ない事情で引き続き30日就業できない場合は、申請で延長できますからね。
そして、失業給付(基本手当)を受けられる日数は、N平さん工場に3年勤務していたとのことですから、90日になります。
もっとも失業給付は会社辞めたあとすぐもらえるんじゃなくて、まず待機期間7日、そして自己都合で離職した人はさらに3ヶ月の給付制限がありますので、そのあとになります。
N平さんはなんで工場辞めたんですか?
N平さん 「もう3年も勤めたし、なんとなく……です…」
ではN平さんは自己都合で離職した人に当たりますね。
A造さん 「いいよいいよ、N平大丈夫だから~~~安心して盲腸、切っちまえ!」
そうしてN平さんはA造さん達に世話になりながら盲腸の手術も無事終え、アパートでのんびり2ヶ月ほど生活してたある日、
B代さん 「N平さん、だいぶ元気になってきたね~~もうハローワークは行ってるの?」
N平さん 「もうすぐ失業保険入るんだわ、今まで世話になって~ほんとに~~~すんません」

N平さん、もしかして失業給付もらうと扶養外れることになるかもしれませんね~、ちょっと確認しましょうね!
失業保険もらうと、扶養外れるってホント?
失業給付をもらい始めると、社会保険の扶養から外れなければならない場合があるんです。先ほど社会保険の扶養に入れる要件いいましたよね?そのうちの2の要件
これが関係してきます。つまり、年間130万円を超える収入がある人は被扶養者になれませんので、それを逆にいうと、失業給付の基本手当日額が130万円÷360日(1年の日数)=3,611円を超える人は、扶養からは外しましょうってことなんです。
これをN平さんの月の収入の平均が14万円とすると、ざっと計算すると基本手当日額が3716円(この数字は概算になります)、支給日数が90日となります。
あらま~3,611円超えちゃいましたね~~~~!
N平さん 「参ったな~」
では、扶養を外れる前提で手続きのお話していきましょう!
扶養外れるとしたらいつから?
失業給付を受けることで社会保険の扶養を外れる時に、いつから外れるのかは統一された法律とかがなく、各健康保険組合によって異なります。
「受給資格決定日」なのか「待期満了日」なのか「初回認定日」なのか、その辺は所属する健康保険組合に直接聞いてくださいね!
そして、N平さんがA造さんの扶養から外れたら、すぐに国民健康保険の加入手続きを市町村役場で手続きしてくださいね!
もっとも、失業保険をもらい終わって再就職していなければ、またA造さんの扶養に入ることはできますよ。
あと、N平さんこの数ヶ月入院手術で大変だったと思いますが、国民年金についても未納にならないようにお手続きはちゃんとしててくださいね!未納期間があると、65歳からもらえるはずの老齢基礎年金の額が少なくなって、また、A造さんのご家族に心配かけることになりますからね!
N平さん 「はいはい!もうこれ以上アニキ達には迷惑かけたくないから、その辺はちゃんとするよ!」
まあ、珍しくN平さんシャンとしていますね!
ところで年末調整に影響は?
税法上は失業保険は非課税なので、N平さんの収入が失業保険以外が103万円以下の場合は、A造さんの年末調整で、N平さんを扶養から抜かなくても大丈夫ですよ!
まとめ
私も東日本大震災で会社をクビになり、失業給付をもらうためにハローワークへいくと、そこにはおびただしい行列ができていたのを思い出します。
あれからもう7年以上経つんですね……!
日々一生懸命生きてて、やむを得ない事情で失業給付をもらうんですから、なんか後ろめたい気持ちになる必要ないんですが、もらうための手続きをする際に不正、不正って不正しないようにって言われると、なんだかドキドキしたのを今でも鮮明に覚えています。
今回N平さんは生活していく上で結構カツカツみたいなので、後から余計なお金を請求されないように、スムースに各種お手続きができるといいですね~!
そのためには、めんどくさがらずに問い合わせしてくださいね!