相続法の改正案が平成30年7月6日に国会で成立しましたね!
40年ぶりの大きな改正となりましたが、今回の改正相続法、高齢化社会に対応した画期的な内容になってます!
もちろん国会で成立したとしても法律は施行、つまり法律が現実に効力を発して実施される状態になるまでにはまだ少し時間がかかりますので、いまいまどうこうということはないのですが、これから人生の折り返し地点を過ぎて私たちが直面するであろう親からの相続や、子供達への相続に備えてなにがどう変るのかをまとめてみました。ぜひ参考にしてくださいね!
では具体的になにがどう変るのか、3つのポイントを解説しますね!
自筆証書遺言が変りますよ~!
今の制度
遺言には財産を誰に渡すとか、ときには隠し子を認知するとかとっても重大なことが書かれていますが、平成30年7月現在、『自筆証書遺言』は、全文、日付、氏名を全~部手書きで書かないとダメですよね(民法968条)。
そして、自筆証書遺言は手軽に自分で書ける反面、遺言した人の真意を確保するために検認(民法1004条)っていう手続きが必須でした。その検認を受けないで早まって遺言を開けてしまったりすると、過料というお金を取られたりしちゃいます。
また、遺言の記載が不備で遺言自体が無効になってしまったりもします。これは財産をキチンと分けようと遺言したにもかかわらず、遺言が無効になってしまっては、遺言した人はガックリですよね~~~!ガックリも天国からではどうしようもありません。その遺言が無効になったことで、残された家族が揉めることが心配です!
具体的には、遺言には、不動産は登記簿に記録されている所在、地番、地目、地積、家屋番号、構造、床面積などを正確に記載する必要があるんです。地番と住所表記は異なりますからね。通常の住所表記で遺言を書いてしまうとどの土地や建物か特定できず無効になることもあるんですよ~~!
これを手書きで書くって、大変ですよね~~~~~!
改正してどうなった!
その1
そこでそうした煩雑さや不備を避けるためにも、自筆証書遺言のうち、財産目録の部分については、ワープロで作成することができるようになりますよ~~~~!(改正民法968条2項)
なので、財産目録を作成するっていう細かく大変なことは、他の人に頼むこともできるってことになりますね。もちろんその目録には、一枚一枚遺言者本人が署名と印鑑を押さないといけませんけどね!
これで、記載内容の不備で遺言が無効になることも少なくなりそうですね!
その2
それから遺言を法務局で保管してくれるように申請することができる様になりますよ~~~!
そうして保管された遺言は、検認も不要となります!
配偶者が保護されるようになりますよ~!

具体例
楽田A造さん(らくだえいぞう55歳)さんは奥様のB代さん(びーよ50歳)と夫婦2人暮らしで、お子様はいらっしゃいませんが、A造さんには弟さんが一人いて、N平さん(えぬへい52歳)っていいます。
そしてA造さんの財産は、今ご夫婦で住んでいる土地家屋5000万円と預貯金が1000万円です。
そしてA造さんにもしものことがあって、A造さんの遺言がなく法定相続分で分けるとすると、妻のB代さんに4分の3、弟のN平さんに4分の1となりますから(民法900条3号)、金額的には妻のB代さんが4500万円、弟のN平さんが1500万円を相続することとなります。
A造さん 「やばいな…N平のことだ…1500万円よこせ!って言い張るぞ…」
B代さん 「そうなったら、私どうすればいいの?現金は1000万円しか無いよね?」
A造さん 「おいおいパレ子さん~~~!家売るしか方法は無いんですか?」

大丈夫、法律が変ります!!!2年以内に施行されます!!
配偶者の居住権が創設されますよ~~!
今までだったら
預貯金1000万円しかないのに、「オレの分1500万円は絶対もらうからな!」って強欲なN平さんが言い張った場合は、預貯金全額をN平さんに渡すだけでは足りず、土地家屋を売り払って現金にして渡さなければならなくなります。
B代さん 「あなた~~~~死なないで~~~~!」
A造さん 「とんでもない!!!そんなこと許されるものか!!」
改正してどうなった?
B代さんはお家に住み続けることができ、N平さんは負担付き所有権を取得することになります!
そして、預貯金については、B代さん750万円、N平さん250万円となります。
新たに配偶者の居住の権利が認められ、配偶者は終身で、つまり生きてる間はその家に住み続けることができますよ~~~!(改正民法1028条、1030条)
A造さん 「2年は死ねないな…」
夫婦間での自宅の贈与等が保護されます!
今までだったら
例えば、夫が亡くなる前に自宅を妻に贈与していたとすると、妻は特別受益を得たことになりますので、遺産分割の際は贈与財産の持ち戻しとしてその贈与はなかったことになり(民法903条2項)その後の遺産分割に影響を与えます。
これを今回のB代さんに当てはめると、B代さんは5000万円の特別受益を得たことになりますので、A造さんの財産を法定相続人であるB代さんとN平さんの間で遺産分割する際には、持ち戻しでその贈与はなかったことになります。そして現金1000万円はまったく受け取ることができないということになってしまいそうです。
そうするとA造さんがB代さんを思ってしたこともN平さんを相手に争うことになってしまったり、大変なことになってしまいますね~~~!
改正してどうなった?
20年以上の婚姻期間がある夫婦が居住用の不動産を贈与または遺贈した場合は、遺産とみなさないで遺産分割協議の対象から除外することとなりました。
そうすると預貯金のみが相続財産となり、B代さん750万円、N平さん250万円となります。
A造さん 「よっしゃ!いいこと聞いた!もうこの家はB代に贈与することにしよう!」
B代さん 「………ほっ………(^^)」
公正証書の形にしてしておくと良いと思います。あとでN平さんが文句言ってきても安心ですからね~~~!この法律は1年以内に施行されますよ!
相続人以外の人にも手厚くなりましたよ~!
今までだったら
相続人以外の人が被相続人に対し無償で介護をしたりして尽くしたとしても、相続財産を取得することはできませんでしたね。
例えば、長男の嫁が長男亡き後も義父母の介護に尽くして看取りました。そしてその義父母の遺言は無く相続人が次男一人だとすると、その財産は次男が独り占めってことになってました。
もしN平さんだったら、絶対独り占めですね~~~~!
改正してどうなった?
そういう義父母に尽くした長男の嫁にも特別寄与分として、寄与に応じた金銭の支払いを請求することができるように改正されたんです。
今まで泣いてたお嫁さんもこれで救われますね!
まとめ
平成29年に成立した改正民法は平成32年までに施行されますから、今回の相続法の改正と合わせて、ここ1~2年で私たちの私的生活を規律する法律は、100年ぶりに大きく変りますね!
私も仕事でお年寄りのお家を訪問すると、もめ事がなく幸せなおじいちゃんおばあちゃんもいらっしゃるけど、実は子供と音信不通だったり、連絡は取れても心割ってお話は全然できないっていう人も結構いらっしゃいます。
そういう家庭では、お金が絡むととたんに家庭内のいざこざが表面化して、年老いて平穏に生きたいおじいちゃんやおばあちゃんのささやかな願いが打ち砕かれてとっても気の毒ですぅ…。
ですから、50歳を超えていく私たちは、自分の子供達にそれらの苦労を負わせないためにも、今回の民法の改正をちょっと心に留めて置きましょうね!