最近はお金を借りるハードルが低くなってきていることから、金銭トラブルをかかえる人が多くなってきました。また、少しずつなら大丈夫だろうとカードをたくさん作って、借り入れを繰り返して、借金が雪だるまのようになってしまって破綻寸前の人も…そのような人が亡くなると相続問題が起きますし、相続の順位も気をつけなくてはなりません。相続しない方法も知っておかないとね!
そこで、今回は相続と絡めて相続の順位や相続放棄についてお話したいと思います。
今回のケース
楽田A造さん(らくだえいぞう55歳)は、妻のB代さん(びーよ50歳)とアルバイトしているD太くん(でーた20歳)の3人家族です。娘のC子さん(しーこ25歳)は結婚していてご主人はG人さん(じーと30歳、初登場ですね~)。C子さんのお腹の中には初めての赤ちゃん(今4ヶ月)がいて、二人は今か今かとこの世に生まれてくるのを楽しみにしています。そしてA造さんには年老いたお父さんが東北にお一人で暮らしていますが、遠くてなかなか会いに行けませんので、A造さんはいつも心の中では「親父元気かな…」と心配しています。
まあ、そんなこんなでA造さんはごく普通のお父さんでしたが、ある日突然心筋梗塞で亡くなってしまいました。ばたばたと葬儀を終えた頃、なんとA造さんに多大な借金があるのが判明、残された家族は悲痛な思いで話し合いをしています。
B代さん 「お父さんねぇ…同僚から勧められて、ナンチャラコインの投資に失敗して、1000万円の借金があったの…」
C子さん 「うそでしょ!ナンチャラコインって、あのやばいやつじゃないの?」
D太くん 「おやじ~~~!ふざけんじゃね~ぞ!親父の借金、もしかして俺らが払うのかよ~?」
G人さん 「お父さん…孫の顔も見ないで逝ってしまって…残念です…」
ねぇねぇ、パレ子さん、これってひどくな~~~~い!

大丈夫ですよ~~!お父さんの借金払わなくて良い方法がありま~~~す!
まずは相続放棄を考えましょ!

相続は、亡くなった人の一切合切の財産、プラスの財産もマイナスの財産もぜ~んぶ相続人にいっちゃうので、もしマイナスが多い場合は、その相続を避けるために相続放棄(民法915条)という方法をとった方が良いですね~
でも相続放棄は、相続があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に届け出をしないといけないんですよ。つまり、B代さんC子さんD太くんは、A造さんが亡くなったときからお葬式やら、いろんな整理やら忙しいとは思いますが、ちゃっちゃと相続放棄の届け出しないとあっという間に1000万円の借金相続しちゃいますぅ~~。
B代さん 「パレ子さん、ありがとうございます!助かりました~、とんでもないことになるところでした!」
C子さん 「本当にお母さん、私達助かったね~もし相続放棄教えてもらわなかったら、大変なことになるところだったよね~」
D太くん 「もし相続放棄しなかったら、オレ、バイト3つは掛け持ちだよね~助かった!パレ子さん感謝感謝!」
G人さん 「お母さん、良かったですね~C子のお腹の子も安心しました~僕も~」
でも相続の順位を気をつけましたか?
東北の田舎にはA造さんのお父さんのE介さん(いーすけ80歳)がいますが、遠く離れているため、E介さんはA造さんの葬儀には出席できませんでした。E介さんはたった1人の息子が自分より先に逝ってしまったことで、心の支えがポキンと折れて、A造さんの後を追うように亡くなってしまいました。A造さんが逝ってから4ヶ月目のことでした。
B代さん 「お義父さん、1人で寂しかったでしょう…最後を看てあげれなくてごめんなさいね…」
C子さん 「おじいちゃん、ひ孫の顔見れるの楽しみにしていたのにね…」
D太くん 「ごめんな~おじいちゃん、会いに行けなくて…」
G人さん 「あれっ?おじいちゃんって相続放棄しましたか?」
もしかして~パレ子さん、もしかして~~~

パレ子さん 「やばっ、すみません~~~~~!おじいちゃんのE介さん、相続放棄してないからA造さんの1000万円の借金相続しちゃいました~~~~~~!」
B代さん 「えっ、なにがどうなるの?」
C子さん 「でも、おじいちゃん死んじゃったから、大丈夫でしょ?」
D太くん 「だよね?だよね?だよね~~~~?」
G人さん 「………」
ここで相続の順位が問題になってきます。人が亡くなると当然に相続が始まるのですが、その第1順位は配偶者と子どもです(民法882条、887条1項、890条)。そして、第1順位の相続人がいない場合は、第2順位の親が自動的に相続人となります(889条1項1号)。
ですから、楽田家ではA造さんが亡くなり、第1順位のB代さんC子さんD太くんが相続放棄していますので、第2順位のE介さんが相続人となります。そしてE介さんは、相続放棄をしないで4ヶ月経ってますので、A造さんの1000万円の借金を相続しちゃいました~~~~~!
G人さん 「あのう…もしかして…おじいちゃんの財産はどうなるんですか?もしかして、C子が相続するんですか?」
代襲相続とは?胎児はどうなる?
そうなんです!一度相続放棄して、免れた~と思っていた借金の相続を今度はC子さんD太くんが相続することになります。A造さんの財産についての相続と、E介さんの財産についての相続は別のものなんですぅ~。E介さんが亡くなっての相続は、本来はA造さんが第1順位で相続しますが、既にA造さんは死亡していますので、C子さんとD太くんが代襲相続します(887条2項)。
C子さん 「わかった!早く相続放棄しよ!」
D太くん 「うん!姉貴、相続放棄サッサとしよ!」
G人さん 「あのう……、相続放棄したら、その子どもは代襲相続するんですよね?C子のお腹に赤ちゃんいるんですけど~」
C子さん 「もしかして、お腹の子どもに1000万円の借金が~~~~~?ちょっちょっちょ、ちょっと待ってよ~~~~!」
はい!ここまでのお話は、相続が開始すると子どもが相続するのを避けるためには相続放棄だし、孫が避けるためにも相続放棄の話しましたよね?ここから、ちょっとややこしい話をしますから、耳の穴カッポじいて聞いてくださいね!
まず子どもが親より先に死亡してたりして相続しないとき、その子の子つまり孫が相続することを代襲相続といいますが、その孫の子どもが相続することを再代襲相続といいます(887条3項)。
C子さん 「え~~~~~!やばいんじゃない!?もう8ヶ月で、あと少しでこの世に誕生するのよ~~!」
G人さん 「1000万円の借金背負って産まれてくるのか……重いな…」
安心してください!代襲相続、再代襲相続の要件は、
■被相続人の子が、相続前に死亡、または、■欠格事由に該当したり、廃除によって、相続権を失ったとき(887条2項3項)となっていて、相続放棄した場合は含まないので、大丈夫!これからあと2ヶ月後に産まれてくるお二人の赤ちゃんは、そんなもの背負ってこないですから~~~!
まとめ
人が亡くなりました…となると、今までその人のことについて無関心だったことでも、自分の身に降りかかる火の粉を払うために、無関心では済まされないこともありますよね~
相続放棄はそんな火の粉をまともにかぶらないためにある制度です。
相続放棄は、相続があったことを知ってから3ヶ月以内にその旨を申告しなければなりませんから、バタバタ後始末している間にあっという間に期限が来てしまします。なので、相続の気配を感じたら、前もっていろいろその人の身辺をみておくと良いかもしれませんね~