相続放棄で期限を過ぎたら延長できますか?

人が死亡して相続が始まると、その相続について「単純承認」「限定承認」「相続放棄」といった、残していった財産についての処分の問題がでてきますよね~。プラスの財産がいっぱいあればその相続で取り分が問題になり、マイナスの財産だらけだった場合は相続放棄が問題になり、またプラスの財産もあるけどマイナスの財産もある場合は悩ましく限定承認など、必要な手続きが出てきます。

ただ、残された財産がプラスの財産である場合は、「単純承認」をして後は取り分が問題になるだけなので、その期限は問題にはなりませんが、「相続放棄」と「限定承認」の場合は、相続があったことを知ったときから3ヶ月という短い期間で手続きをしなければなりません。知らないうちに期限が過ぎたり、知ってたけど手続きが間に合わなかったりと、いろいろ問題が起きてくるんですね~。

そこで、相続に関していろいろな期限が過ぎたらどうなるの?期限を延長できるかしら?あるケースを通して問題になっている事を見てみましょう

今回のケース(下記の事情以外は考慮しないこととしますね!)

楽田A造さん(らくだえいぞう55歳)には、妻のB代さん(びーよ50歳)スーパーでレジをしている娘のC子さん(しーこ25歳)工場で電子部品を組み立てている息子のD太くん(でーた20歳)の家族がいます。しかし、10年ほど前からA造さんは仕事の都合で、家族と離れ単身で大阪に住んでいました。そうすると理由は定かではありませんが、7年ほど前からB代さん達はA造さんと連絡が取れなくなってしまいます(なんか、どこかの朝ドラでもありましたよね!あのときはお父さんが記憶喪失でしたが…)
残されたB代さん家族は、お父さんからの仕送りも途切れた状態でしたが、娘のC子さんも働きだしていたので、なんとか生活はできました。

ところがA造さんがいない生活に慣れてその存在感も薄れた頃、B代さん達に衝撃の手紙が届きます。内容は「A造さんが1ヶ月前に亡くなりました…」と、ありました。B代さんC子さんD太くんは驚きましたが、悲しみは中途半端でした。そりゃそうですよね~家族をほったらかしにして行方を眩ましていたんだから~(今回葬儀や遺骨等の細かいことは省きますね)。

そうこうしているうちに、大阪のとある市役所から、税金の滞納通知と支払い督促が届きます。

額は100万円…ですぅ…。

B代さん   「勝手に行方眩まして~家族ないがしろにして~そして、残った家族にこんな仕打ち…」

C子さん   「どういうこと?私達はもう7年近くもお父さんなしで生活してきたんだよ」

D太くん   「勝手に家族をほったらかしにした親父の税金なんか、まさか俺たち払わなくていいよな~」

と3人は「あ~でもない、こ~でもない」といろいろため息ついたり嘆いたりしていたら月日がどんどん過ぎていきました。

ねえねえパレ子さん~~~!これってやばくないですか~ちょっと心配ですぅ~?

「私も心配ですぅ~~~なんとか、がんばります!!!!」……バタバタ……

相続放棄できますか?

まず、B代さんは配偶者、C子さんD太くんは子として、A造さんの財産を相続するのが原則です(890条、887条1項)。そして、相続はプラスの財産だけではなくてマイナスの財産も相続しますからね。

なので、B代さん家族はA造さんが残したマイナスの財産(税金の滞納分100万円)を相続することになりますから、相続したくないのであれば相続放棄(民法915条)という方法をとった方が良いですね!。

でも、相続放棄をするには、自分のために相続の開始があったことを知ったときから、3ヶ月以内に家庭裁判所に言わないとダメなんですぅ、期限があるんですよ~。

B代さん   「あら、やだ!C子、お父さん死んだっていつ連絡来たっけ?」

C子さん   「死んだってきたのは、死んでから1ヶ月経ったとき…でも、税金の督促きたのは、それから1ヶ月経ってて…」

D太くん   「え~~~~!税金の督促きてから、もうだいぶ経ってるよ~~~~~!」

期限過ぎそうですぅ…

A造さんが死亡した日は8月1日、

死亡の通知が届いたのは9月初め頃で、

税金の督促はその1ヶ月後の10月の初め頃、

それから3人で「あ~でもない、こ~でもない」といろいろため息ついたり嘆いたりして、今12月半ばですね~

B代さん   「お父さん死んだって知ってから約3ヶ月経ってますけど~、パレ子さん大丈夫ですよね!?」

C子さん   「相続放棄、まだ間に合いますよね!?」

パレ子さん  「相続放棄は、自分のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に言わないとダメって期限があるんですけど…」「う~~~~~~ん」「え~~~~~~と」

D太くん   「パレ子さん、なんとか言ってくださいよ~~~もしかして期限過ぎてる?」

まず、自分のために相続があったことを知ったときですが、B代さん家族はA造さんと遠く離れて7年近くも音信不通で生活費等の送金のやりとりもまったくなかったので、死んだという事実を知っただけではなく、税金の督促がきたことでマイナスの財産を相続しなくてはならないかも~と気付いたときが相続があったことを知ったときになります(ここの事実認定は家庭裁判所の判断になるので、きっぱりと言いきれませんが…)。

B代さん   「税金の督促~C子、いつ?いつ?いつだったっけ?」

C子さん   「え~っと、10月の初めだったよね~D太!」

D太くん   「今、12月の半ばで…ということは…助かった~まだ3ヶ月経ってない!」

でも、家庭裁判所にB代さんC子さんD太くんが「A造さんの借金、相続放棄をしますよ~」って、言いに行くだけではダメなんですぅ…。必要な書類を集めたりして、申述書を作成するのに時間がかかるんです。あと、10日くらいでできるかしら…。

期限の延長はできますか?

期限の延長は原則できません。簡単に期限の延長を認めると、財産関係がゴチャゴチャになっていろんなところに影響を及ぼしかねないですからね~。

でも期限が過ぎてないと認められる例外はありますが、これはなかなか厳しいです。例えば借金等の負債がいくらあるかとかの遺産の状況を知ってから3ヶ月経ってませんよ~って裁判をして立証していかないといけないんです。

なので、今回は寝ないで、申述書を作成するしかありません!B代さんC子さんD太くん、お覚悟を!!!

まとめ

大黒柱のお父さんがいなくなっただけでも、残された家族はそこから立ち直るだけでも、相当の苦労しているのに、それに追い打ちかけるように、借金まで背負わされそうになるなんて~~~ひどいことです。

でも、楽田家の残されたご家族は、なんとか借金背負わなくて良さそうですね~~ほっ…。

税金の滞納は、どこまでも追っかけてきますよ~。住むところを変えて知らんぷりで生活していても、ある日突然、貯金を差し押さえられたりしますからね~絶対逃れられません!

ですから、皆さん、税金だけは、いえいえ税金もその他の借金もちゃんと払っていきましょうね!