人が死亡して相続が始まるとその人の財産のすべてが相続人に移転します。そうすると財産がいっぱいある人が亡くなった場合、その相続の順位や、どれだけの財産が自分のものになるかその割合が気になりますよね。
そこで、相続が始まってからの相続の順位や割合はどうなるのか、あるケースを通して問題になっている事を見てみましょう
今回のケース(下記の事情以外は考慮しないこととしますね!)
一流会社のエリートサラリーマンの楽田A造さん(らくだえいぞう55歳)は妻のB代さん(びーよ50歳)と有名私立大学院生の娘のC子さん(しーこ23歳)と普通の私立大学2年生の息子のD太くん(でーた20歳)と、A造さんの母F乃さん(えふの75歳)の5人で幸せに暮らしていました。でも、一見幸せそうに見えていますが、実はA造さんは10年ほど前から愛人さんをかかえています。妻のB代さんは薄々いろいろ…気付いていますが、A造さんがお給料をたんまり入れてくれるので、細かいことには首を突っ込まずに、セレブな奥様として楽しんでいました。
そんなある日、突然A造さんは交通事故で死んでしまいます。
母のF乃さんは、一人息子が突然亡くなってその悲しみは尋常ではありませんでしたが、A造さんの残した財産のうち、どれだけ相続できるかもとっても興味津々でした。だって、F乃さんは夫のE介さん(いーすけ、享年40歳もし生きていたら80歳)亡き後、大切に育ててエリートサラリーマンとなったA造さんを生きがいにしていましたから…
葬儀を終えて、みんないろいろな思惑をかかえながら相続の相談をしているとき、突然、愛人のK子さん(けーこ40歳)が息子のJ大くん(じぇーだい10歳)を連れて楽田家を訪問しましたので、家族は騒然となります。
愛人K子さん 「息子J大はA造さんの子どもです。J大の相続分、いくらくれるんですか?」
娘のC子さん 「相続分?ふざけないで、あるわけないでしょ、どこの馬の骨かもわからないのに~」
息子のD太くん 「ホントだよ~親父の息子はオレ一人だ!」
妻のB代さん 「パパが浮気して愛人がいたのは知ってたわ…でも、隠し子がいたなんて~!」
母F乃さん 「私の可愛い息子がそんな人の道外れたことするわけないざます!財産は親の私が半分もらうから~あなたの分はないざます!!!」
J大くん 「お母さん…僕、そんなのいいよ~」
因みに、A造さんの財産はもろもろ1億2000万円です!!
ねぇねぇ、パレ子さん、この事態ってやばくないですか~~~~~~!

「登場人物が多くなって誰の味方をすればいいのやら~~~とりあえず、正確な情報お伝えしますね!!」
相続が始まってその順位はどうなるの?
人が亡くなりその人の財産について相続が始まると、まず相続の第1順位は、配偶者と子どもとなります。そして、子どもがいない場合に初めて、第2順位で亡くなった人の親が相続権があるとして登場してきます(民法889条1項)。
なので、第1順位のC子さんら子どもがいる今回の場合は、第2順位の親であるF乃さんに財産が相続されるということは法律上はありません。もちろん、法定相続人らが話し合いをして、財産を誰が相続するかを決めることはできますから(遺産分割協議)、おばあちゃんに「0円よ~」といってへそ曲げられても困るので、100万円あげるとかいろいろ決めるのはオッケイですよ~。
F乃さん 「E介さん亡き後、私はA造さんを生きがいにして生きてきたのよ~100万円じゃいや!」
B代さん 「まあまあお義母さん、では200万円差し上げますから~気を落とさずに~」
C子さん 「おばあちゃん、私の分からも10万円上乗せしてあげるから、気を取り直してね」
D太くん 「まったく強欲ばばあだな~いやいや、おばあちゃん、ぼくの分からも1万円あげるよ」
愛人K子さん 「も~~~~そんなことより、J大のことどうなるの?」
そもそも認知された子どもに相続権はあるの?

今回のケースでは、突然愛人のK子さんがA造さんの子どもとして、J大くんを連れて登場していますが、そもそもJ大くんはA造さんの財産について相続権があるんでしょうか?
生物学上J大くんがA造さんの子どもだとしても、A造さんが認知(民法779条)をしていなければ、J大くんに相続権がないのが原則です。でも、最近はDNA鑑定によって生物学上親子関係が立証されると、他の子どもと同様第1順位の相続権が発生することになります。この場合はJ大くんもA造さんの遺産を相続することが出来ます。
因みにJ大くんはちゃんとA造さんから認知はされていましたよ。やったね!J大くん第1順位ですよ。
B代さん 「いつもはズボラなのに、こんなことはキッチリしてるなんて…」
C子さん 「私達に弟がいたわけか…まあ可愛いから許すか…」
D太くん 「弟…あのさ~姉貴ふざけんじゃね~ぞ!可愛くなんかね~よ!」
愛人のK子さん「A造さんは私とJ大を1番愛してくれた…第1順位……ほっ」
J大くん 「僕、どっちでもいい…」
F乃さん 「私もどっちでもいいざます!どっちにしても、第2順位の私にはないざます!」
相続権があるとしたらその割合は?
では、J大くんにも相続権があるとしてその割合はどうなりますか?C子さんやD太くんと同じ権利があるんでしょうか?
A造さんはB代さんと法律上結婚していますので、C子さんD太くんは嫡出子、J大くんはA造さんと婚姻関係にないK子さんとの間に生まれていますので、非嫡出子となります。
この場合、以前は非嫡出子は嫡出子の半分しか相続できなかったんですが、平成25年に改正(民法900条)されて、嫡出子と同じ権利を有することになりましたから、J大くんはC子さん、D太くんと同じ割合でもらえることになります。具体的な割合は、
B代さん 2分の1
C子さん 6分の1
D太くん 6分の1
J大くん 6分の1 となります。なので、金額は、
B代さん 6000万円
C子さん 2000万円
D太くん 2000万円
J大くん 2000万円となります。
B代さん 「もうパパがやったことだから、もういいわ!、私がもらう額は大差ないし~」
C子さん 「へ~私に弟がもう一人できるのか~可愛いから許しちゃう~」
D太くん 「どこが!それより親父死ぬの速すぎだよ!オレの就職口聞いてくれるはずだったじゃん」
愛人のK子さん「A造さんに遺言書いててもらうんだった…そしたらもっともらえたのに~」
J大くん 「お母さん、Nintendo Switch買いに行こうね~!あと、スーパーマリオオデッセイも~」
F乃さん 「私もA造さんに遺言書いててもらうんだったざます~あ~失敗したざます~~~」
おいおい皆さん、本性丸出しになってますよ~~~ちょっと押さえて押さえて…。
まとめ
平成25年の民法900条の改正は、相続のときに被相続人の子は皆同じ割合で相続できるとした改正ですが、これは、憲法14条の「法の下の平等」を根拠に画期的な改正となりました。
昔でいえば、いわゆるお妾さんの子は本妻の子と比べて冷遇されたと聞いたりしましたよね~。それが相続に関して法律的にその偏見が解消に至ったんですね。
因みに最後愛人のK子さんが言ってましたが、法律上の相続分は上記のようになりましたが、もし、A造さんが遺言を書いていたらそれが優先します。なので、もしA造さんが「全財産をK子とJ大に相続させる」なんて書いてあったら大変なことになってましたね~「くわばら、くわばら」。