遺留分を計算するとき、贈与はどうなるのかしら?

みなさんは相続で揉めると言うことを想像したことがありますか?

私のうちは悲しいかな~財産はぜ~~~んぜんないので想像したことはないですが、実は相続で揉めた人の76%は、財産が5000万円以下の人たちですって~~~!

えっ、5000万円もない?はい!みなさん、今、5000万円の札束を想像しませんでしたか?確かに5000万円の札束はなかなかね~~~、でも、土地や家一件で5000万円にはすぐなりますよ~~~。


家族が亡くなって悲しんでる時に、できれば相続で揉めることは避けたいですよね~~~。

そこで今回は相続で揉めた場合に遺留分という制度を通じてその解決策を考えてみましょう。

今回のケース(下記の事情以外は考慮しないこととしますね!)

楽田A造さん(らくだえいぞう55歳)は妻のB代さん(びーよ50歳)と娘のC子さん(しーこ28歳)と息子のD太くん(でーた24歳)の4人家族です。

A造さんは中学を卒業後、地元の窯元で陶磁器を焼く修行をし、今ではその地方の代表的な器を作って静かな根強いファンをもっています。B代さんはA造さんの窯業を手伝っており、C子さんは銀行に勤めて7年経ち、D太くんは東京の大学を卒業後そのまま就職して今に至っています。

あっ、もう一人紹介しておきます。A造さんの弟のN平さん(えぬへい48歳)の息子のO馬くん(おーま28歳)、忘れてました~~~~!

N平さんは奥さんのT子さん(ていこ46歳)と別れたあと、一人でO馬くん育てていました。でも10年前に酔っ払って歩いていたところを車に轢かれて亡くなってしまいました~。

そして独りぼっちになったO馬くんでしたが、そのO馬くんは温和なA造さんが大好きで、小さい時からA造さんの窯元に通ってお手伝いをしてたんです。ですから、A造さんも可愛がりO馬くんはいつしかA造さんの元ですっかり一人前の陶工(陶芸を仕事とする人)に成長しています。

そんなある日、A造さんは糖尿病からの高血圧そして肝臓ガンを発症して、半年間の闘病の末帰らぬ人となってしまったんです。そして葬儀が終わって初七日が過ぎ、明日はD太くんが東京へ帰ろうというその夜、もめ事が勃発します。

B代さん  「あんた!どういうこと!そんなのあんまりじゃない!?」

C子さん  「お母さん落ち着いて!とにかく冷静に~~~~~~!」

D太くん  「何でだよ~~~O馬がおやじの後を継ぐって~~~~~~!」

O馬くん  「すみません…僕も遠慮したんですが…親方が、どうしてもって言って…」

なんと、A造さんは1年前にC子さんに結婚資金と称して1000万円を、D太くんには、3年前に300平方メートル土地(時価3000万円)の登記を名義変更していたのです。それから、なんと死ぬ直前に、O馬くんに長年培ってきた窯業に関する権利諸々を全部譲っていました。その価格は6000万円~~~~!

そして、B代さんには特に前もっては何にも残しませんでした…。

パレ子さ~~~~ん!お願いですぅ~~~、みんなが不幸せにならないように、納得する方法教えてくださ~~~~い!

は~~~~い!任せてくださ~~~~い!みなさん納得するように頑張ります!


そもそも法定相続分はいくらになりますか?

A造さんが亡くなってA造さんの財産を相続する法定相続人は、妻のB代さんと娘のC子さん、息子のD太くんの3人で、甥のO馬くんはその中には含まれません。

そして、遺言がない場合の法定相続の割合を計算すると、B代さん2分の1、C子さんD太くんがそれぞれ4分の1になります。

因みに、A造さんが残した財産は、B代さん達家族が住んでた土地と建物2000万円(土地1200万円、建物800万円)現金400万円で、合計2400万円になります。特に遺言とかは残してませんでした。

そうすると、B代さん1200万円、C子さんD太くんは600万円ずつとなりそうです。

でも、先ほどC子さんは結婚資金として1000万円、D太くんは3000万円の土地をA造さんの生前にもらってますし、O馬くんが譲り受けた窯業に関する6000万円の権利はどうなるでしょうか?

そもそも相続財産には何が含まれるの?

人が亡くなると、亡くなった人の財産全てがその相続の対象にになりますから、貯金やお家などプラスの財産も相続の対象になりますし、借金やローンなどのマイナスの財産も、もちろん相続の対象になりますよ(民法896条)。そして相続財産には相続人やそれ以外の人が受けた生前贈与も含まれます(特別受益、民法903条)。

そして、後にお話する遺留分減殺請求の計算の基礎となる相続財産には、

1 相続人への特別受益に当たる生前贈与

2 相続人以外への相続開始1年前にされた生前贈与

3 2以外でも遺留分権利者の利益を害することを知って不当に行われた贈与も含まれます。

そうすると、C子さんがもらった結婚資金として1000万円、D太くんがもらった土地3000万円、O馬くんがA造さん亡くなる直前に譲り受けた窯業に関する6000万円の権利は、全て、A造さんの相続財産に含まれますね~。

それらを先ほどの2400万円と合わせると、1億2400万円になります!

B代さん  「……………………(怒りの炎、メラメラ)……………

C子さん  「あのう……それでは、お母さんにあんまりですぅ…」

D太くん  「オレ、明日から仕事なんだけど~~~なんとかしてよ~~パレ子さん」

O馬くん  「…すみません………僕は、陶芸の仕事ができればそれでいいです………」

そういうとき、遺留分減殺請求という方法が…

では、まず、それぞれの相続分を計算してみますね

B代さん  1億2400万円×0.5=6200万円

C子さん  1億2400万円×0.25=3100万円-1000万円(特別受益分)=2100万円

D太くん  1億2400万円×0.25=3100万円-3000万円(特別受益分)=100万円

次にB代さんの遺留分は?

遺留分は法定相続分の2分の1になりますから、6200万円×0.5=3100万円になります。

B代さん  「じゃあ私は今住んでる土地と家をもらったらそれでいいよ~~」

C子さん  「そうしよう、そうしよう、それが一番いいわ!」

D太くん  「オレは何でもいい!明日帰るから、それでいいよ、オレは家業を継ぐ気がないし、O馬にやる!」

O馬くん  「…あっ……はい、僕は何も…」

B代さんの遺留分3100万円から土地と建物2000万円を引くと1100万円ですが、この点について、O馬くんが譲り受けた6000万円の権利のうち5分の1ほどをB代さんに渡して、O馬くんとB代さんで共有にするのはいかがでしょうか?B代さんは長年A造さんの窯業を手伝ってきたのですから~~~!

O馬くん  「5分の1ではなくて、半分でお願いします!(キッパリ)」

C子さん  「それがいいわ!それが~~~~O馬!男だね~~~~!」

D太くん  「お~それがいい!助かった~~これで安心して明日帰れる!」

B代さん  「O馬!!あんたもかわいいね~~~~」 


まとめ

相続人がみなさん集まって、遺言や法定相続分とは異なる遺産分割協議をしてもオッケイです。

民法906条には、遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをすると規定されていますからね。

長年A造さんご夫婦は一緒に窯業を営んできたのですし、B代さんがこれからを担う若いO馬くんと一緒にA造さんの残した窯元を守って行くのは、A造さんも望んでいたでしょうね。

きっとA造さん、最後の半年間、ガラガラと具合が悪くなり自分の命の火が消えようとして、慌ててしまったんじゃないかしら~~~。

みなさ~~~ん!お元気なうちに遺言を書くことお勧めしま~~す!遺言は元気な時に書くから、残された家族や関係者にとって良い遺言を書けますよ!