人が一人亡くなると、相続やら遺贈やら、死因贈与やら…なんか知ってるようなよくわからないような言葉が飛び交います。特に税金が絡んでくると、知らなかったわ~~~では済まされないことも多いですよね!
そこで、今回は楽田さんのご家族を通じて、遺贈、死因贈与に関すること、勉強してみましょう!
今回のケース(下記の事情以外は考慮しないこととしますね!)
楽田E介さん(らくだいーすけ80歳)は一人息子のA造さん(えいぞう享年40歳)亡き後、A造さんの奥さんのB代さん(びーよ50歳)と、その娘、会社員のC子さん(しー子25歳)と息子、同じく会社員のD太くん(でーた20歳)と4人で仲良く暮らしていました。E介さんは若い時から農業をバリバリやってて、とってもお元気でした。特に息子のA造さんが早く亡くなったものですから、C子さんD太くんの父親代わりにもなってくれて…。
ところがE介さん最近、お年のせいかあっちこっち痛くなってきて、だんだん自分の身体に自信がもてなくなってきました。そして、B代さんにつぶやきます。
E介さん 「なあ、B代さん…あんたには世話になったなあ…なんかお礼がしたいなあ~」
B代さん 「あら、お父さん!私こそ~いつもお世話になってました~C子やD太が小さい時からホントにありがとうございます!でも、なんですか?改まって~」
E介さん 「そろそろ、土地とかの名義をあんたにしとこうかなあ…どうじたもんじゃろの~」
パレ子さ~~~ん、お願い、E介じいちゃんの力になって~~~!

ハア~~~~イ!任せてくださ~~~い!皆さんのお力になりま~~~~す!
もし、相続が始ったらどうなるのかしら~

E介じいちゃんには、今みんなで住んでる土地建物や広大な農地、農機具が財産としてあります。本当はA造さんにその財産を継いでもらいたかったんですが、15年前に先立たれてしまったので、農業はB代さんと二人でがんばってたんですねぇ…。
では、もし財産についてE介じいちゃんが、何も手を打たないで亡くなった場合、相続が始ります。その場合は、A造さんが相続するはずの財産全部を、C子さんD太くんが代襲相続(民法887条2項)しますね。
E介じいちゃん「わしは、めんどくさがりだからなあ、それでもいいかな…」
B代さん 「お父さん、大丈夫!まだまだお元気でいられますから~一緒に田んぼやりましょ!」
C子さん 「ちょっと私、田んぼもらってもねぇ~要らないよ!」
D太くん 「オレも会社辞める気ないし~要らねえよ!」
遺贈と死因贈与の違い
そうですね~、C子さんに広大な農地を継いでといっても、ゆくゆくお嫁にいってしまえばそれも大変なことになりますよね~。D太くんも高校卒業後働きだして3年目でがんばってますからねぇ~。
E介じいちゃん!まずはB代さんに財産を渡すのが一番いいんじゃないかしらね!
遺贈という方法
まず、E介じいちゃんが、「全財産を嫁のB代に与える」って遺言を書いておく遺贈という方法があります。これだと農地に関して、農業委員会の許可が必要ですが、E介じいちゃんの意志がしっかり反映できますからね!
E介じいちゃん 「字を書くの面倒くさいな…手が震えて上手く書けないんじゃ…」
C子さん 「パレ子さん、他の方法はないんですか?おじいちゃん嫌だって~~」
死因贈与という方法
では、口頭で済む、死因贈与って方法はどうですか?
死因贈与は贈与者であるE介じいちゃんと受贈者であるB代さんとで口約束で成立しますから、E介じいちゃん、楽ですよ~字を書かなくて済みますからね!これにより、必ずB代さんがE介じいちゃんの財産を受け取ることになります。
両者の比較
ちょっと、専門的なことお伝えしますね。
「相続させる」は法定の相続人にしか言えないんですが、「遺贈する」とか、「死因贈与する」は法定の相続人にもできるし、まったく関係ない人にもできるんですね。
死因贈与は贈与する人とそれを受ける側の契約ですが、遺贈はあげる側が勝手に一人でやれますから、密かにその内容を誰にも知られないようにできるのも、安心ですね。
そして、遺贈は2通り包括遺贈と特定遺贈とあって、包括遺贈は「全財産の2分の1を与える」とか割合で与えることができるので、遺言を書いた時から財産構成が変わっても、一定の割合で与えることができます。ただ、借金なども受け取る可能性もあるので注意です。
これに対して、特定遺贈は「○○に農地1000平方メートルを遺贈する」と具体的に書くので、マイナスの財産は受け取らなくて済みますので、安心です。でも、遺言書いた後で、農地を他の人に売ってしまったりすると、その遺言が何の意味もなさなくなるので、これも注意です。
税金の面での違い
では、今回、どうしたら良いでしょうか?具体的にE介じいちゃんやB代さんにとってもどっちが良いかその違いを良く検討してみましょう。
E介じいちゃんの財産は、みんなで住んでる土地建物(3000万円)や広大な農地(5000万円)、農機具になります。特に土地建物と、農地が問題ですねぇ。これらをE介じいちゃんの名義からB代さんの名義にするには、不動産所有権移転登記が必要になってきます。
まず、死因贈与を原因としてその登記をすると登録免許税が2%、そして不動取得税が4%かかります。
そして、遺贈を原因として登記をしても登録免許税が2%、不動取得税が4%かかってしまいます。
しかし、同じ遺贈でも法定相続人に遺贈した場合は、登録免許税が0.4%、そして不動取得税はかかりません。ですから、E介じいちゃんの気持ちをそのまま実現するには、B代さんをE介じいちゃんの養子にして、遺贈するのが良いと思います。
これを具体的に当てはめてみると、
3000万円+5000万円=8000万円 この公示価格の7割が固定資産評価額になりますから、
《死因贈与、遺贈の場合》
登録免許税 8000万円×0.7×0.02=112万円
不動産取得税 8000万円×0.7×0.04=224万円 合計336万円
《法定相続人への遺贈の場合》
登録免許税 8000万円×0.7×0.004=22万4000円 のみです。
E介じいちゃん 「あっちゃ~~~~!こんなに違うのか~仕方ない、遺言書いておくか~」
B代さん 「そうですね~お父さん、一度書いておくと、20年経っても、安心だから~」
C子さん 「ほっ、良かった~これで安心してお嫁に行けるぅ」
D太くん 「オレも~~今の仕事やりがいあって、絶対続けるもん~じいちゃん、ガンバレ!」
まとめ
税金の面を比較すると、えらい違いになりますね~、前もって比較しておいて良かったですね~。
農業も近年、後継者問題がささやかれていますが、時代の流れも変わってきましたね~若い人達の自分のやりたいことが明確になっていた場合、その若者に無理矢理後を継げ!とは言えなくなってきましたよね~。
こういう問題も、いよいよおじいちゃんが認知症とかになったりして慌ててどうしようではなくて、後を継ぐ人達が人生の後半戦に入ってきたら、準備しておいた方が良さそうですね!
まだまだ相続問題、遺贈問題は、いっぱい考えるべきことがありますので、この続きを楽しみにしておいてくださいね!