遺贈、登記は遺言執行者に任せてね!登録免許税いくら?

人が死亡して残された財産のうち、家族などの相続人に財産を渡す場合はトラブルも少ないですが…えっ、そうでもない?家族でもトラブル多い?

確かに~~(^_^;)

でも、家族以外の人が残された財産を受け取るなんてことになったら、さらに大変ですよね!


今回は、死亡した人の気持ちを尊重してその財産をキチッと分けて始末をする仕事、特に土地の登記や登録免許税などはなかなか分かりにくいことが多いですから、それらをキチッと分けて始末する遺言執行者のお仕事について、学びましょうね!

今回のケース(下記の事情以外は考慮しないこととしますね!)

楽田A造さん(らくだえいぞう55歳)は妻のB代さん(らくだびーよ50歳)と娘のC子さん(しーこ25歳)と息子のD太くん(でーた20歳)との4人家族です。少し前から身体の調子が悪くなりやせてきたA造さんは、いよいよ心配になって病院に行き、余命3ヶ月の宣告を受けてしまいます。なんと、進行性の膵臓ガンでした。

A造さん「ふ………ふぅ………はぁ………最後、いろいろ始末つけないとな……」

A造さんは長年にわたり真面目に会社勤めをしてきましたし、家族も大事にしてきました。でもたった一つ秘密があったのです。十年ほど前から、身よりのないかわいそうな事務の女の子の相談にのっているうちに、不倫関係になってしまったのです。でも、その女の子だったK子さん(けいこ、今現在32歳)には、A造さんとの間に一人子どもがいまして、J大くん(じぇーだい8歳)といいますが、K子さんはA造さんの家族を思いJ大くんの認知を求めないまま、今現在に至っていました。

A造さん「……パレ子さん…僕は遺言を書いた方が……いいですよねぇ……」

パレ子さん…お願いします、手伝ってください。

ハイ!  わかりました!  A造さんと楽田家の皆さんのお力になります!


遺言書いて遺言執行者を指定します

A造さんは、長年真面目に一流会社にお勤めしてましたし、妻のB代さんも堅い性格でしっかり無駄使いせずに生活してましたから、財産はしっかり残っています。

まず、今現在家族が住んでいる土地建物(土地5000万円建物2000万円)、先祖代々受け継いできた土地(3000万円)と数年前に投機のつもりで買った土地(2000万円)B代さんが知ってる預貯金3000万円、B代さんが知らない預貯金3000万円です。

ということは、A造さんはこの際しっかり遺言書いておいた方が良いです! あとあとのために!

A造さん「一つ気がかかりなことがあるんだよ…K子とJ大のことなんだが…J大をまだ認知してないんだ…」

おっと!!!!、

ということは遺言の中には、J大くんを認知する内容も書きましょうね? では公正証書遺言(民法969条)にして、遺言執行者を指定(1006条)しておきましょう。

そして、A造さんは、静かに息を引き取りました。

B代さん  「あなた~~~~~~!こんなにあっという間に~~~」

C子さん  「パパ~なんで、健康診断うけてなかったの?早すぎるよ~」

D太くん  「真面目なおやじも、なかなかやるな~~~~、愛人かよ~それに隠し子もいたなんて~~」

K子さん  「A造さんが残してくれたJ大と密かに生きて参ります。」

J大くん  「ときどき来るお父さん、死んじゃったの?」

K子さん  「……涙…」

遺言執行者って何者?

A造さんの遺言には、

1,今現在家族が住んでいる土地建物(土地5000万円建物2000万円)はB代に、

2,先祖代々受け継いできた土地(3000万円)はC子とD太に、

3,B代さんが知ってる預貯金3000万円は、B代、C子、D太に1000万円ずつ、

4,数年前に投機のつもりで買った土地(2000万円)はK子に、

5,B代さんが知らない預貯金3000万円はJ大に、と書いてありました。

相続財産総額は、預貯金6000万円、不動産1億2000万円(相続税評価額は9600万円)です。

あっ、あと一つ大事なことが~~、C子さんを遺言執行者に指定するってことも書かれてました~~~~!

C子さん「え~~~~~!、ちょっと待って~~~、遺言執行者なんですか?それ!」

D太くん「姉貴、かっこいい~~~!」

K子さん「C子さん、よろしくお願いします~」

遺言執行者っていうのは、遺言の内容を実現するために必要な手続きをする人をいい、遺言執行に必要な一切の行為をする権限を持ちます。例えば、相続財産の目録を作成したり、預貯金の解約手続き、不動産の名義変更手続き、それと、子どもの認知をする場合は、必ず遺言執行者が必要です。

C子さん「むり~~~~~~~!そんなの~~~~~、私できない~~~~~」

でも、A造さんも遺言に書いてあったので、C子さんがんばって!

B代さん「なんでC子なの、私がやります!そして遺言ビリビリ破いてやります!!」

相続税は払わないといけませんか、他手続きは?

預貯金は?

まず、J大くんを認知(民法784条)します。そして、預貯金はそのままそれぞれにお渡しします。B代さんが知ってる預貯金3000万円は、B代、C子、D太に1000万円ずつでしたね。J大君には3000万円です。

D太くん 「なんだよ~~~!オレには1000万円で、じぇーだか、べーだか分けわかんないやつに3000万円~~~~~~!ふざけんな~~~~~~!」

不動産は?

次に、今現在家族が住んでいる土地建物(土地5000万円建物2000万円)はB代さんに、先祖代々受け継いできた土地(3000万円)はC子さんとD太くんに、数年前に投機のつもりで買った土地(2000万円)はK子さんに、でしたね。

ここで、A造さんの名義になっている不動産を相続、または遺贈を原因として所有権移転登記をします。

この場合、遺言執行者が指定されているので、その登記は遺言執行者であるC子さんが登記義務者として登記ができますよ~、これが遺言執行者が指定されてないと相続人全員が登記義務者となって手続きをしないとダメでした~~。そうすると、B代さんは今回の遺言に納得してないどころか、はらわた煮えくりかえってますので、大変なことになるところでしたね。


相続税はどうなりますか?

まず、相続税の基礎控除を求めて、課税遺産総額をだしてから、それぞれの相続税を出しますね。

基礎控除額は、3000万円+600万円×4人(J大くんもね)=5400万円ですから、相続財産総額(1億5600万円)から基礎控除額(5400万円)を引くと、課税遺産総額が1億200万円となります。

B代さん 土地建物7000万円(相続税評価額5600万円)現金1000万円

C子さん 土地建物3000万円の2分の1(相続税評価額1200万円)現金1000万円

D太くん 土地建物3000万円の2分の1(相続税評価額1200万円)現金1000万円

K子さん 土地2000万円(相続税評価額1600万円)

J大くん 現金3000万円

を相続、遺贈を受けてますから、課税遺産総額、1億200万円のうち、

B代さん 42.3%

C子さん 14.2%

D太くん 14.2%

K子さん 10.2%

J大くん 19.2%

を取得したということになりますので、それぞれの相続税は

B代さん1億200万円×42.3%=4314万6000円×0.2-200万円=662万9200円

C子さん1億200万円×14.2%=1477万3680円×0.15-50万円=171万6052円

D太くん1億200万円×14.2%=1477万3680円×0.15-50万円=171万6052円

K子さん1億200万円×10.2%=[1061万2080円×0.15-50万円]×1.2131万174円(K子さんは相続税2割加算対象です)

J大くん1億200万円×19.2%=1958万8400円×0.15-50万円=243万8260円

ただ、B代さんは配偶者控除で、0円、J大くんは未成年者控除があり、120万円(20歳-8歳=12年×10万円)引きますので、約半分になりますね。

それに加えて不動産の登録免許税と不動産取得税は?

相続人は固定資産評価額に対し登録免許税0.4%、遺贈を受けた人は固定資産評価額に対し登録免許税2%かかります。そして、不動産取得税は、K子さんだけ4%かかります。

B代さん 「仕方ないですね~K子さんは~」

C子さん 「仕事が多すぎて、もうクタクタですぅ~~~」

D太くん 「姉貴、お疲れ~~オレは自分の道を行くから、財産なんて気にしない!」

K子さん 「税金、あっえっ…少しくらい大丈夫です、A造さんにはホントに感謝いたします~」

J大くん 「ママ~お父さんはもうこないの?一緒に遊んでくれないの?さびしいな…」


まとめ

皆さん遺言を書くってあんまり考えたことがないと思いますが、先日仕事で死亡給付金のお手続きに、お客様のところにお伺いしたところ、やはり遺言を書く重要性について話しが及びました。亡くなった人が一番悲しいのは、残された家族や大事な人が、揉めることですよね…

遺言って、自筆証書遺言ならそんなに難しくなく書けるし、でも大事なことは公正証書遺言にしておくのが良いですね。そして今回の楽田さんのように、認知というような事柄に及ぶときは、是非、遺言執行者を指定しておくことも、大事です。

是非、今、自分を取り巻く家族や大事な人のことを、頭に思い浮かべて、その思いを文章にしてみてはいかがでしょうか。